TPPをめぐる議論まとめ

当初は抽象的な議論に終始していましたが、賛成派が討論番組に出演するようになりようやく議論がはじまりました。このページでは随時論点を整理していきたいと思います。
※このページは予告なく内容を変更することがあります。(2011.11.1更新)


▼総論・抽象的・精神的議論


「平成の開国、第三の開国」-日本は鎖国していないで国を開くべき。内向きな日本の閉塞感を打破し、海外に打って出るべきだ。
第一の開国は黒船来航。第二の開国は敗戦を意味すると思われるが、第一の開国では不平等条約により関税自主権を失った。それから100年、戦争をしてようやく勝ち取った関税自主権を今自ら手放そうとしている。開国ではなく「壊国」だ。
中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる

そもそも日本は鎖国などしていない。平均関税率では4.9%。農産品のみの平均も21%しかなく、すでに相当程度開かれている。
日本は鎖国しているのか?―関税率について―

まずは交渉に参加してルール作りに参加するべきだ。なぜ最初から負けることを考えるのか。交渉に参加して納得がいかなければ離脱すればよい。
カナダは「乳製品の関税撤廃は無理だが、交渉に入りたい」と言って門前払いになっている。交渉参加は裸同然の状態で参加しなければならない。
『郵貯かんぽのカネが狙われてるのに何ねぼけたこと言ってんですか』

交渉参加は当然、協定を締結することを前提とした交渉参加。様々な懸念事項がある中で政府としてのビジョンが見えない。どのような場合に交渉離脱するのか。何を守りぬくことを約束するのかをはっきりと国民に示すべき。

TPPはすでにニュージーランド・シンガポール・チリ・ブルネイの4カ国で発効している協定(P4協定)をベースに進めるもの。「ルール作り」というよりも「修正」。日本主導でルール作りをしていくならこれまで自民党政権下で進めてきたASEAN+6などを推し進めるべきだ。
経済産業省:ASEAN+6/ASEAN+3

交渉参加後に離脱することは法的には可能だが日米関係が悪化することは必然。実質的に難しくなる。
TPP「交渉後の離脱も可能」は推進論者の詭弁!日米関係悪化を脅しとした協定締結が狙いだ

交渉参加したとしても過半数以上の国会議員が反対を表明しているため国会で批准することができない。中途半端な状態で参加するぐらいなら参加しないで欲しいとの発言がある。
米国のワイゼル首席交渉官「真剣に結論を出すつもりのない国は交渉に参加しないでほしい」

普天間問題の迷走、尖閣問題でも領有権をはっきりと主張できない今の民主党政権に外交交渉力があるとはとても思えない。
普天間移設問題、野田首相は鳩山氏に過剰な気配り 玄葉氏は腰砕け
鈍感な民主党に中国が投げたメッセージ

成長著しいアジア・太平洋地域の経済成長を取り込むためにもTPPに加入するべき
アジア太平洋地域の持続的成長を目指して(経団連)
TPPに中国・韓国は入っていない。将来的にもTPPの枠組みに入ってくることはないだろう。なぜなら韓国は、韓米FTAでコメなどの最低限の例外を何とか確保して合意したばかりなのに、それらもすべて明け渡すようなTPP に入る意味は考えられない。中国は為替を自分で操作している国のため、自由貿易以前の問題。TPPに含まれている知的財産権の保護の強化などは中国の産業にとっては死活問題であり、中国の参加は相当ハードルが高い。
TPPをめぐる議論の間違い(NewsSpiral)

日本が参加した場合の各国のGDPの割合を見ると、アメリカが7割、日本は2.5割を占めるためこれは実質日米FTAである。
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中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる

「アジアの経済成長」を狙うならTPPではなくASEAN+3を推し進めるべき。日中韓FTAの事前交渉は、2011年12月に報告書作成作業を完了し、2012年から政府間交渉に入る準備を進めている。
TPPをめぐる議論の間違い(NewsSpiral)

将来的に想定されているFTAAP(2004年にアメリカが提唱)に向けてその枠組作りに参加するべきだ
WTOドーハラウンドが妥結せず、EUも崩壊の危機を迎え、リーマンショックにより最大の牽引役だったアメリカが低迷、ドル基軸体制が崩壊しかかっている中、FTAAPなどの広域な自由貿易圏構想が果たして現実的といえる状況なのか。

そもそも、広域な自由貿易圏を作ることは、相互に依存して世界の秩序を安定させるという自由貿易の理想と反するものであり(ブロック経済化)、一層対立を深化させるものである。

突如浮上したアジア太平洋FTA(FTAAP)構想(みずほ総合研究所)
ギリシャの「借金棒引き」見通しはEU崩壊の序曲?欧州ソブリン・リスク再燃が物語る“重大な意味”
ドル基軸通貨体制は終焉、通貨無極時代に~米国債格下げが意味するもの

中国包囲網を形成し、成長著しい中国を牽制。アメリカとともに安全保障を確保しつつ、中国に自由化を迫るべき
米のTPP交渉加速 背景に対中牽制の意図(MSN産経)
低迷するアメリカ経済と一体化(ブロック経済化)するよりも、ASEAN諸国・中国・韓国などのアジア諸国との一体化を図っていくべきだ。日本がTPPに参加することで知的財産権の保護などを最も嫌う中国は日本との貿易協定を結びにくくなるため、事実上中国と距離を置くことになる。日中の関係よりも、中韓での二国間交渉が進み、日本がアジアで取り残されることにもなりかねない。

中国を中心とした経済圏に入るか、アメリカを中心とした経済圏に入るか、という議論ではなく、ASEAN+6など、日本から枠組みを作っていく動きが必要だ。

韓国はアメリカとFTAを結び国際競争力をつけて有利な立場になった。日本もうかうかしていられない。
韓国はGDPに占める貿易輸出額の割合が43.4%もある国。日本は11.4%(2009年)。輸出産業を育てなければやっていけない国と比べて国策を論じるのはナンセンス。
総務省統計局:貿易依存度

米国の普通自動車の関税はすでに 2.5%でしかなく、現地生産も進んでいるのだから、韓国に先を越されると言っても日本の損失はわずかである。
TPPをめぐる議論の間違い(NewsSpiral)

米韓FTAにより、両国の企業は自由な取引を阻害する国の施策に対して提訴することができるようになった(韓国では毒素条項と呼ばれているISD条項)。

韓国が現在強いのはウォン安。TPPで関税を撤廃することよりも円高対策をするべき。

▼各論:農業


日本の農業はこのまま何もしなければ崩壊してしまう。TPPに参加して構造改革を図るべきだ。
農業問題に矮小化している。TPPは金融・医療など多岐に渡る。TPPと農業問題は別で考えるべき。

コメなどの一部の農産品を除けば日本の農産物の関税はすでに低い。関税をかけていない農産物(Duty Free)の割合は日本35.1%に対し、アメリカは30.5%。

大規模化して競争力をつけるための施策として、やる気のある大規模農家に対してのみ補助金を配り、やる気のない兼業農家の農地を集約する方向で農政改革を進めてきた。しかし民主党政権になって全ての農家に補助金を出す形にしてしまい、再び貸した農地を戻す(貸し剥がし)が起こっている。
このような逆行したことをやっているにも関わらず、今また農地を集約する方向で動いており、民主党は何を考えているのか。

TPPに参加して関税を撤廃し、かつ日本の農業を守るのであればそれを補うだけの補助金を出す必要がある。現在震災復興のために予算がないと言っている状況でどこにそんなお金があるのか。

ブドウ、リンゴ、メロンなどは海外でブームだ。日本の農業は弱くない。品質で勝負して海外に打って出るべきだ。
福島第一原発からは今なお放射性物質が放出され続けており、海外では放射能を理由に輸入制限をされている状況である。このような状況の中、品質勝負も何もあったものではない。
福島県内での原発事故に係る各国の輸入検査(農林水産省 2011.10.31)
日本食品の輸入制限について調べてみました(NAVERまとめ)
日本食品への反応(yahoo)

食の問題は売れる・売れないという問題ではなく食料自給率、すなわち食料安保の問題につながる。世界的に食物価格が高騰する中、もっとも重要なエネルギー源となる穀物を海外に依存することは国家主権を失うことにつながる。
2月の世界食料価格指数、2.2%上昇-石油高騰で過去最高に(WSJ 2011.3.4)

▼各論:医療


医療機関の株式会社化、混合診療の解禁などによる国民皆保険制度の崩壊など、医療が競争にさらされることで国民の健康が保証されなくなるのではないか
公的医療保険制度など国が実施する金融サービスの提供は、TPP協定交渉参加国間のFTAでもGATSと同様に適用除外とされており、議論の対象となっていない。
ISD条項により、米国など外国企業が日本で活動する場合に競争条件が不利になると判断される公的介入や国内企業への優遇措置と見なされる仕組みは廃止が求められる。そのため医療における公的医療保険も許容されない。
TPPをめぐる議論の間違い(NewsSpiral)

▼各論:食の安全


遺伝子組換えの表示義務、BSE問題に関連した牛の月齢制限などは非関税障壁として撤廃させられるのではないか。
現時点では議論はないが、仮に個別分野別に規則が設けられる場合、例えば遺伝子組換え作物の表示などの分野で我が国にとって問題が生じる可能性がある。
TPP協定交渉の分野別状況 5:TBT(貿易の技術的障害)

▼各論:投資


郵政民営化により「郵便貯金」と「簡保資金」を運用することがアメリカの狙いではないのか。
これまで我が国は、WTO・EPAにおいてすでに高いレベルの自由化を約束しており,追加的約束を求められる余地は考えにくい。他方、TPP協定交渉参加国間のFTAにおいては見られないものの,我が国との二国間の協議において提起されている関心事項(郵政,共済)について、追加的な約束を求められる場合には、慎重な検討が必要。
企業、投資家が国を相手に提訴することができるISD条項(米韓FTAでも盛り込まれ「毒素条項」と呼ばれ韓国で問題になっている)が入っている。これにより国が国民のために自由に規制を設けることができなくなるのではないか。
日本がすでに締結している多くのEPAにISD条項は含まれており、一度も訴訟を起こされた事例はない。
そのEPAは全て発展途上国との間で結んでいるものだ。訴訟大国アメリカを相手にして訴えられないという保証はあるのか。韓国の状況を見ればその危険性は誰にでもわかることだ。

▼詭弁・見当違いの議論


日本のGDPに占める第一次産業の割合はたかだか1.5%。この1.5%を守るためにかなりの部分が犠牲になっている。
残りの98.5%が全て輸出産業と思わせるような発言だが、実際はそうではない。
グラフ:経済活動別国内総生産(2008年)
日本の農業は補助金ジャブジャブで甘やかしすぎ。関税を撤廃して競争力をつけるべき。
補助金は日本だけでなくどの国でもやっている。やっているどころか日本よりも手厚く保護している。さらにアメリカは輸出補助金という、WTOに反する補助金までやっている。

農家所得にみる補助金の割合はアメリカが3割、フランスが8割。
EUの共通農業政策(CAP)による農業補助金は年間498億ユーロ(約8兆円)、EUの予算全体の4割以上。
大規模農家優先の農業補助金
WTO 補助金協定にいう補助金による「著しい害」の概念(RIETI)

適切な補助をせずに自由化してこなかった結果が今と言うこともできる。兼業農家もやる気がないから兼業農家なのではなく、儲からないから兼業農家になってしまった側面も忘れてはならない。

大規模化すれば十分海外に対抗できる。
農業は儲かる。
大規模化しても日本の地理的条件を考えればアメリカやオーストラリアには太刀打ちできる規模にはならない。
現在、日本の農家の平均農地面積は1.7ha程度。アメリカは200ha、オーストラリアは3,000ha。政府民主党がすすめる食と農林漁業の再生会議が提言の中で掲げられている目標は20~30ha。この数字すら現実的ではない。
ある程度の農地集約は必要だが、一方で補助金も必要。

大規模化すればするほど、機械化、農薬の大量使用となる。さらに遺伝子組換え作物を導入し、より効率化を図っていく必要も出てくる。消費者は本当に安ければいいのか。

このままでは企業が海外に流出し雇用が減っていく
(産業の空洞化)
TPPに参加しなくても企業は海外に流出していく。実際すでに多くの企業が関税がかからない現地生産を進めており、海外に工場を移転させている。さらに言えば、問題となるのは関税よりも円高。食い止めたいならTPPで関税を撤廃するのではなく円高・デフレ対策をまずするべきだ。
日本は貿易立国なのだから貿易によって成長していくしかない。
自由貿易の恩恵を得てきたという意味では「貿易立国」だが、貿易をしなければいけないという意味で「貿易立国」というのはおかしい。日本のGDPに占める貿易輸出額の割合は13.1%。輸入は10.8%。他国と比べてもかなり貿易依存度が低い国(下図)。日本は世界10位の人口をかかえ、1400兆円の資産を国内に持っている世界的にも珍しい内需の国。輸出を拡大するよりも内需を拡大するためにデフレ対策をするべき。

総務省統計局:貿易依存度
世界の人口ランキング
日本国内の経済循環と資産・負債額
日本企業を成長させることで国民全体が潤う。
震災復興のためには成長が欠かせない。
多国籍企業が儲かったとしても国民に利益は還元されない。雇用は海外に流出していくばかりか、多国籍企業が儲けた分を税金で徴収し地方に還元しようと公共投資(政府調達)を行おうとしても、公共投資自体も自由化されるため海外の企業に奪われてしまう。法人税も減税すれば税収も落ち込み、その分消費者から税金を徴収することになる。
食料自給率はまやかし。農水省が既得権益を守るために作ったプロパガンダであり、カロリーベースの食料自給率を出しているのは日本だけ。TPPで農業の既得権益をぶっつぶせ。
ではカロリーベースの食料自給率ではなく、金額ベース、重量ベースで算出することに何か意義があるのか。カロリーベースの食料自給率は生きていくうえで最も重要な穀物の自給率を最もよく表している。これは国民にとって必要な穀物を自国でどれだけ賄えるかということ。バイオエネルギーや原油価格高騰などにより穀物価格が高騰していく中、日本は自国で穀物を生産しなくてもよいのかという議論をしなければならない。